Chapter Ⅰ

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目が覚める。 久しぶりにあの頃の夢をみた。 やはり忘れようとしてはだめなのか・・・。 目を閉じるとよみがえる。血のにおい、真っ赤にそまる地面――――― 「クロエ様、起床のお時間です。それと朝食の準備が整いました。」 扉の前から凜とした声が聞こえた。 大きな声を出していないのによく響くその声で我に返る。 「いま行く、リン。」と返事すると、承知いたしましたと扉の前から声の主――――リンはいなくなった。 ふっと呼吸が楽になった気がした。 どうやら、いつのまにか呼吸が荒くなっていたらしい。 軽く深呼吸して呼吸を整えると、ベットから降りて洗面所へと向かう。 洗面所はこの部屋になる。さっきリンが立っていた扉の右側だ。 扉を開けると目の前にアンティーク感が漂う大きな洗面台、すぐ脇には脱衣所とシャワールームがあった。 その大きな洗面台で顔を洗うと、フックに掛けられている真新しいタオルでその顔を拭く。 ふっと鏡に映っている自分を見た。 私を見た人が第一印象は?と訊かれたら、きっと気味が悪いと答えるだろう。 なにせ、右目が黒色の瞳に対し左目は紫色だった。 そして、その紫の瞳は何かの紋章ような幾何学的な模様をしていた。 これが何なのかずっと思ってきた。 生まれつきによるものでもない。 何か私と関係あるのだろうか。 思えば、この目になった時から―――― 「お嬢様、お召し物をお持ちいたしました。」 洗面所の扉の外からメイドがノックと共に声をかける。「ああ、分かった」と言うと「かしこまりました」と言って、部屋から出て行った。
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