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目が覚める。
久しぶりにあの頃の夢をみた。
やはり忘れようとしてはだめなのか・・・。
目を閉じるとよみがえる。血のにおい、真っ赤にそまる地面―――――
「クロエ様、起床のお時間です。それと朝食の準備が整いました。」
扉の前から凜とした声が聞こえた。
大きな声を出していないのによく響くその声で我に返る。
「いま行く、リン。」と返事すると、承知いたしましたと扉の前から声の主――――リンはいなくなった。
ふっと呼吸が楽になった気がした。
どうやら、いつのまにか呼吸が荒くなっていたらしい。
軽く深呼吸して呼吸を整えると、ベットから降りて洗面所へと向かう。
洗面所はこの部屋になる。さっきリンが立っていた扉の右側だ。
扉を開けると目の前にアンティーク感が漂う大きな洗面台、すぐ脇には脱衣所とシャワールームがあった。
その大きな洗面台で顔を洗うと、フックに掛けられている真新しいタオルでその顔を拭く。
ふっと鏡に映っている自分を見た。
私を見た人が第一印象は?と訊かれたら、きっと気味が悪いと答えるだろう。
なにせ、右目が黒色の瞳に対し左目は紫色だった。
そして、その紫の瞳は何かの紋章ような幾何学的な模様をしていた。
これが何なのかずっと思ってきた。
生まれつきによるものでもない。
何か私と関係あるのだろうか。
思えば、この目になった時から――――
「お嬢様、お召し物をお持ちいたしました。」
洗面所の扉の外からメイドがノックと共に声をかける。「ああ、分かった」と言うと「かしこまりました」と言って、部屋から出て行った。
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