Chapter Ⅰ

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「朝から騒がしいな。何かしたのかリン」 いつから後ろにいたのだろうか、男――――林 興徐(リン コウジョ)に話しかける。 齢、25にしてクロエの執事をやっている中国人。 10代の頃、中国で1番の秀才と呼ばれ、マスコミに取り上げられた。 頭がいい以外に容姿も完璧だ。 「朝食の支度の手伝いがしたいと申したのでお断り致しただけですよ・・・朝から邪魔されたくないので」 冷たい声音で淡々と答えるリン。 「確かに手伝わせたら酷いことになるな」 こくりと頷いて、クロエが持っているカバンを抱える。 「リン、これからあの人に会いに行くのか」 カバンを持って行こうと踏み出した足を止め、振り返る。 クロエはリンの着ている執事専用の制服を見ている。 普段はラフな格好でいいと言っているから、生まれ故郷のチャイナ服を着て仕事をしている。 だから、こういう正装でいる時は何かの行事か、または――――― 「はい、近くの別荘に暫らく滞在するそうなので挨拶に・・・本当に奥様に会わなくていいのですか?」 親に会いに行く時だ。 「ああ、あの人は私のことを嫌っているからな。顔を見た瞬間、嫌な顔をするだろう・・・あの人は私より妹のクレアの方がいいんだ。だから気にせず、行って来てくれ」 「しかし、御腹を痛めてまで産んだ子を嫌う母親など――――」 「仕方ないさ・・・私は醜いからな」 前髪で隠している左目に手をあてって呟くクロエ。 心配になったリンが声をかけようとした時、いまだ泣いているカルナがこちらに向かって走ってくるのが見えた。 どうやら紅葉にも酷い事を言われたらしい。さっきよりも酷い顔になっている。 「さぁ、この話は終わりにしよう。カルナのことはまかせろ・・・頑張って面倒を見るから。制服姿も似合っているぞ、リン」 カルナに気づき、何も無かったかのように振舞うクロエ。 「うぁ~、似合ってますね!カッコイイです!!いつもチャイナ服だから、なんか新鮮ですね!」 クロエの横に並んだカルナが言う。さっきまで泣いていた事が嘘みたいにケロッとしている。
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