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「そうですか・・・有難う御座いますとだけ言っときます。さぁ、クロエ様。御食事に致しましょうか。」
「えっ、じゃあ僕が料理を運びま――――」
「やめてください。もう一度作り直す事になりますので。あなたはクロエ様に武術の稽古をして頂くだけで結構です。どうしても手伝いたいと申すのならば――――」
と言いながら持っていたクロエのカバンをカルナに渡す。
「このカバンを傷つけず、汚さずに車まで運んどいてください。いいですか、決して落としたり、ぶつけずに運んでくださいね・・・これはあなたにしか出来ない事ですよ」
営業スマイルで強く念をおすリン。
そもそも普段から余り笑わない彼が営業スマイルを使う時は相手が面倒な人の時だけ。これを使うと誰でも丸め込む事ができる。その人が単純ならなおさらだ。
「まかせてくださいっ!!ちゃんと綺麗なまま車まで持って行きますから・・・では!!」
どうやらカルナは素晴らしく単純だったようだ。
意気揚々と車に向かって走り出した。
それを横目に何事も無かったかのように食堂へと歩き出すクロエとリン。
「やっと面倒事から解放されたという顔をしてるな。あまりいじめるなよ。あれでも私のコーチの様なものなんだから」
「ええ、分かってます。カルナは武術しか取り柄はないですからね・・・・それ以外なら私が教えられたのに・・・申し訳ございません。」
「平気だ、気にするな。まぁ、さすがのカルナもカバンを持っていく事くらいは出来るだろう。」
「そうですね。これなら絶対出来るでしょう。」
だが、後にカルナがカバンを落としたと泣きながらやって来る事を2人はまだ知らない。
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