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それを聞いて、
「橋立希さんだね。希さんと呼ばせてもらっていいかい?」
と祥子は希に聞いた。
「も、もちろんです。」
希はうなづきながらそう答えた。
「じゃあ、そう呼ばせてもらうとして。さて、見てほしいと渡されたものだけど・・・。」
祥子はそう言って希に渡されたケースを開いて中に入っているものを取り出した。
そして中のものを見た祥子は、
「漫画の原稿だね。」
と言った。
ケースの中から出てきたのはビニール袋に綺麗に入れられた漫画の描かれた原稿用紙だった。
「は、はい。」
希はすぐに返事をした。
それを聞き、
「やっぱり希さんが私が編集者だったのを知っているみたいだねぇ。」
祥子は原稿用紙を手に持ったまま希の方を見てそう言った。
「はい。『フフフ出版』で編集者をされてたんですよね。」
希がはじめて焦らず話した。
「そこまで知ってるのかい。どうして知っているんだい?」
祥子がそう聞くと、希はサーッと顔を青くした。
それを見て、
「怒っているとかそういうわけじゃないんだよ。ただ純粋に気になっただけなんだよ。あなたみたいな若い子が私のような古い人間をどうして知ってるのかってね。もう編集をやめて10年くらい経つからね。」
と希を見て笑みを浮かべながら優しくそう聞いた。
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