・第1話 「その一言を求めて」 後編

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そんな高宮を見て、 「さて、話は終わり。あんたは戻っていいわ。席はそのまま残しておくにしても多少の片づけは必要でしょう。」 と祥子は高宮に部屋を出るように言った。 「は、はい。し、失礼します。」 高宮はそう言って頭を下げるとすぐに部屋を出て行った。 高宮が出て言った後、 「土屋と三浦も戻っていいわ。今、言った通り高宮は私が預かるから。」 祥子は自分たちのやり取りを黙ってみていた土屋と三浦にそう声をかけた。 それに、 「はい、失礼します。」 すぐに土屋は『終わった!』という嬉しさを隠さない表情を浮かべて部屋を出ようとした。 そんな土屋に、 「うれしそうに出て行っているところに悪いけど。よーーく言っておくわよ。自分でできもしない事を引き受けて、それで周りに迷惑をかけて、これ以上『楽笑』に悪影響を与えるならあんたを即刻辞めさせるからそれを肝に銘じておきなさい。」 祥子は厳しい視線を向けて言った。 それを聞いて、土屋はちらりと社長の方を見た。 すると、 「そりゃそうだろう。そんなことわかりきってることだよな。次がないことくらい。なぁ、土屋。」 社長は笑いながらそう言ったが、本気で言っていることがひしひしと土屋には伝わった。
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