・第1話 「その一言を求めて」 後編

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2人になって先に口を開いたのは、 「で、何でこんなまわりくどいことしたのかしら?」 祥子だった。 その祥子のあきれた様な言い方の問いに、 「まわりくどいとは失礼だな。」 社長はそう言った後、 「いや、結果はそういう事になるか。はぁ・・・俺は圭祐にいかに自分が甘い考えでここに就職したのか気付かそうと思っていたんだ。ふつうあれだけ部署をたらいまわしにされたら、自分に何か原因があると考えるだろう。と。」 社長はため息を吐いて、『まわりくどい』方法をとった理由を話した。 それに、 「その作戦は大大大失敗ね。あの子、自分が悪いってまったく思っていなかったわよ。まわりに迷惑をかけるだけかけてるって感じだったわね。甘やかされて育った子は扱いが大変ね。」 祥子が思ったままを嫌味まじりに言った。 が、 「あぁ、そうなんだよ。うちでは唯一の男の子だからな。つい甘やかしすぎた。それにしても最初に言っておいたんだけどな。重要な仕事はさせるなって。まったく、土屋は何を聞いていたんだか。というよりも、お前が出てくるのが遅い。予定ではもっと早くお前が登場してきて、圭祐を押し付け…任せる気でいたのに。」 祥子の嫌味など全く気にすることなく、さも祥子が早く出てこないのが悪いと言わんばかりの勢いで言い返す社長。
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