・第1話 「その一言を求めて」 後編

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それを聞いた祥子は、 「…よく言うわよ。あまりしゃしゃくり出ないようにって言ったのはそっちじゃない。だから気にはなっていたけど、私に来るなって言ったんだからどうにかするだろうって来なかったのよ。それをさも私が悪いように言うなんてよく言えたわねそんなこと。」 信じられないというように言い返した。 それに社長は、 「そんな事言ったか?まぁ、良い。圭祐の事よろしく頼むな。あっ、さっき言った跡継ぎの話、お前の教育の結果次第ではって考えてはいるんだ。そう思って教育してくれ。じゃあ、俺は仕事が待ってるんでこのあたりで失礼する。」 と言って、あきれてものが言えない状態の祥子が口を開く前に退散だといわんばかりに、そそくさと部屋を出て行った。 社長が出て行ったあと、 「はぁ…逃げたわね。全くもともと私に押し付けるつもりでいたのならまわりくどいことしないでさっさと私にお願いすればよかったのよ。そうすれば希さんは悩まずに済んだのに。ってここでグチグチ言っても仕方ないのよね。誰もいないし。いいわ、とりあえず何をしても良いみたいだから明日からバシバシ教育してやるわ。逃げだしたらそれまで、私は一切手加減なんてしないわよ。」 一人の祥子はそう言った後、明日からどう高宮を教育するかと考え、楽しそう・・・ほかの人からしたら恐怖の笑みを浮かべた。 それから祥子は、 『話が終わったらメールか電話をしてね。私は会社の近くで少し買い物をしてくるから。だからこれを見たからって慌てて話を切り上げたりしなくていいから。ゆっくり話をしてきてちょうだい。』 というメールを希に送って編集部に寄ることなくそのまま会社を出た。
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