・第2話 『欲張っても得することはなし。』

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晴海がいなくなった後、 (晴海さん作業早いなぁ。俺よりも多く見てたはずなのに。) 自分の作業の遅さに反省する高宮。 そしてそんな自分に、 (反省…今までの俺だったら絶対にすることのなかった事だよな。それに、本の整理なんて絶対にしない。) と思いながら苦笑を浮かべた。 今までの高宮を知っている人ならば、今の高宮を見たらあまりの違いに驚くことだろう。 今までの高宮なら人と同じ作業をして自分が遅れていようがその人に対して『悪い』なんて思うことはなかった。 それに雑務を押し付けられてもぶつぶつと文句を言いながら適当にこなしていた。 それが今じゃ自分から積極的に雑務を引き受けるほどになった。 それは祥子の教育により、自分の行動を思い返すこと、原因が自分にあるという事を考える事、どんなに事でも引き受け自分の身にしていく事などの大切さを嫌というほど理解したからだ。 そして、今までは自分の好きなジャンルや作家の本にしか興味を示さず、他のものは読みもしないで馬鹿にしていた。 が、『津田古書店』に来て、図書の部屋へ入り、色々な本を祥子に読まされてからその考えは見事にひっくり返された。 今では、 (本当、どうして今まで読まなかったんだって過去の自分を叱りたい。そうしたらもっと多くの本や漫画を読むことができたのに。というか本の事だけじゃなくて色々と思い出すだけで恥ずかしい…。あぁ~、過去の自分は消せないけど今まで迷惑かけた人にひたすら謝罪したい。) と自分自身で思う様になっており、色々な本や漫画を読んでこなかったことを悔い、自分から『謝罪』をするという事を思う様になっており、希と接していた時の高宮はどこへという感じにまでになっていた。
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