4人が本棚に入れています
本棚に追加
気持ちをそう切り替え、去って行くバスを諦めて、停留所脇にあるベンチに腰を下ろした時だった。
バカでかい衝突音が周囲に響き渡り、俺は音の方向を見た。
交差点の真ん中にバスが倒れていた。その隣には半ば潰れた乗用車が止まっている。
どうやら右折待ちをしていたバスに乗用車が突っ込んだらしい。ここからじゃ乗ってる人達まで確認はできないが、乗客全員、無事ではすまないだろう。というか、死者がいてもおかしくないレベルだ。
遠目にその光景を見ていたら、全身ががくがくと震え出した。
もしも間に合っていたら。あのバスに乗っていたら。俺もあの事故に遭っていたのだ…。
この日以来、バスを追いかける夢は見なくなったから、どうやらあの夢は、俺が事故に遭うことを防いでくれようとした何ものかのお告げだと、俺はそう信じて感謝している。
でも、一つだけ。
バスを追いかける夢はもう見なくなったけれど、横転したバスの夢はあれからしょっちゅう見るんだよな。
まあこればかりは、衝撃的過ぎた事故の記憶のせいだから、どうすることもできないんだけど。
とりあえず、遠目だったから、事故に遭した人達は見なかった。だから夢の中でも見ない。それだけが救いだな。
バスを追いかけて…完
最初のコメントを投稿しよう!