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だからゆっくり、本棚を引っ張った。
赤いランプが真奈美の存在を世界に知らしめた。
「あの子、またご飯4等分にしてるよ」
真奈美を見ていた男達は言った。
鉄格子のついた重い扉の奥で、真奈美は一人、家族と食事をしている姿をその場にいる誰もが目にし、不思議に思う。
「お母さん、はい。ごめんね。今月厳しくてさ。グラタンも、人間のご飯じゃ嫌だよね。ごめんね」
彼女の目の前には誰もいない。
手に包む何かに熱せられたご飯を落とし、火傷をしながらもにこにこと笑う姿を医師に見せてもどうしようもないという。
だが真奈美には見えているのだ。死んだはずの家族が全員目の前にいて、そこで食事をしている姿を。
ハムスターの死から始まり理想を形にした、そして更なる理想の為に彼女は母親をも殺し、それを目の前に創造した。
一時期は奇妙な事件として一世を風靡したが、すぐにその事件は忘れられる。 真奈美は母の中からだけでなく、今や世界から姿を消そうとしていることに、誰も興味を示そうとはしなかった。
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