Face Down -回 想-

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『さ、じゃあ始めますか』 次に届いたのは最初に自分を呼んだ声と同じ低音。 向かって一番右端、背凭れの一番低い赤みがかった椅子に座る男。 大きな肘掛にスラリと伸びた両脚を預け、不遜な態度でそう言った。 くっきりとした二重、高く形の良い鼻、分厚い唇、全てが恵まれた容姿に見えるその男は、少し刈り上げたサイドの髪を掻き上げ、退屈そうに伸びをした。 目が合うと男は一転しギラリと瞳を光らせオレを睨み付ける。 その瞳の鋭さに、思わずたじろいだ。 (始めるって、なに…?) そしてその隣、右から二番目の豪勢な青みがかった椅子に足を組んで座る男は一度も声を発することなく、ただじっとオレを見つめてる。 高い背凭れに体重を預け、肘掛けに肘を置き、組んだ両手は膝に置いて。 少し垂れた目尻が影を落とし、優しい雰囲気を醸し出している割には、その男の放つ空気はどことなくひんやりとしていて、それがなんだか直感的に『怖い』と感じてしまうのは何故なんだろう。 シュっと通った顎までのラインも、綺麗な鼻筋も、唇の形も。 同じ男なのに、その男を作る全てを美しいと感じてしまう。 目と目を合わせていれば吸い込まれてしまいそうなその暗い瞳にいたたまれなくなり、思わず目を逸らした。 『あー、じゃあ突然で悪りぃんだけどさ』 しばらくの間魅入ってた、そんなオレに右端の赤い男がなんでもない風に言い放つ。 『…脱いで?』
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