『ＰＥＴ×ＲＯＯＭ』

Ｆａｃｅ Ｄｏｗｎ -回 想-

「……は？」

告げられた言葉に思わず聞き返した。
「脱いで」って聞こえたけど、聞き間違い？だよね？

『なぁ、聞こえねぇの、脱げっつったんだけど？』

ピタリと固まったままのオレは何をすることもなくただ立ち尽くす。
そんなオレに紫の椅子に座った男がイラついた様子で舌を打ち、そう言った。

「な…にを…
『は？脱ぐっつったら服しかねぇだろ、わかんだろそれくらい』

「ばかなの、お前」って、いかにも人を蔑んだ言い方で男はまた言った。
服を？脱ぐ？なんで、なんのために？

『あーもういーや、お前ら脱がしてやれよ、出来ねーみてぇだから』

男は再び舌を打ち、相変わらず動けずにいるオレに痺れを切らしたのか、後ろにいるであろう男たちにそう告げた。
声に振り返れば、ズラリと並んだ黒い革靴がまず目に飛び込んで。
はっきりと顔を確認することは出来なかったが、黒いスーツを纏った数人の男たちが返事と共にオレの元へと向かってくるのが見えた。
そして反射的に身体を庇ったオレの服に手をかけ、強引に引っ張った。

「！？や、やめろよ…っ
『るせーよ、つーかお前さぁ、自分の置かれてる状況、わかってる？』
「は？じょう…きょ…？」

そんなの、わかるわけなんてない。
だってオレは普通にいつも通りに働いてただけで、そんで今日もお疲れーって一本だけビールでも飲もっかなって思ってたくらいで。
それが突然拉致されてこんな訳わかんないとこ連れてこられて、縛られて…なのに、それで何を解れってゆうの？