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『…誰か説明してあげたら?かわいそうじゃない』
後ろから伸びてくる複数の手から逃れるべく、ギュウと服を押さえ縮こまった。
そしたらフンと鼻を鳴らした黄色い椅子の男が、視線はゲームに向けたまま言った。
『ははっ、まぁそうか。そりゃそうだよな?』
(なんなんだよっ、コレ…)
黄色い椅子の男の言葉を受け、今度は赤い椅子の男がそう言ってオレを見遣った。
そして眉を上げ、伺うような表情を作ってみせる。
『あのさ、七原くん?だっけ』
再びオレの名を呼んだ赤い椅子の男は、肘掛けから脚を下ろし、前のめりで手を組んだ。
そして…
『君さぁ……買われたんだよ?』
「、え…?
『俺らに』、そう付け加えてニヤリと微笑んだ。
当然、オレは問い返すしか出来なくて。
訳がわからないと言った顔をしたのか、紫の椅子の男が三たび舌を打つ。
『君んち、中華料理店だっけ?売り上げ、良くなかったんデショ?』
「、なんで…っそれ
『だから君のゴリョーシンはお金に困って借金なんかしちゃってたってわけ。まぁそれも返せなくてお店潰れちゃいそーだったからさぁ?優しい俺らが、それを肩代わりして、代わりに君を譲り受けたってわけ』
「、は…?な、なにそれ…っ
『まぁ要するにぃ、お金で売られちゃったんだよ、君。あー、えと、七原晴希くん?』
クスクス、笑い声が色んなトコから聞こえて、頭をグルグルグルグル、さっきの言葉が回る。
でも意味なんてわかってなくて、「これなんかの冗談だよね?」とか、「あののんびりした親がそんなことするわけない」とか、考えてる割にはジワジワ手の中で湧き上がってくる不快感が自分の絶望を代弁しているようで。
ダメだ、バカ。パニクんな、こんな時こそ落ち着かなきゃ。
でもどうやって?落ち着き方って、どうすんだっけ?
『あぁでも良かったよ?相手が俺らみたいのでさ?』
「、うそだ…んなの、
『変な趣味したきったねぇオヤジじゃなくて良かったじゃん、なぁ?てか、聞いてる?』
赤い椅子の男が「なぁ?」って同意を求めれば紫の椅子の男が「ははっ、確かに」って笑ってみせる。
なに、なんで笑ってんの?なにが良かったの?
なに、これ。ねぇなんなの。どうなってんの。
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