Face Down -回 想-

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『下も。だよ?七原くん?』 「!なっ… 『とーぜんだろ?裸んなれって言ってんだろ。なぁ、俺らも暇じゃねぇんだからさ、早くしろよ』 赤の男と紫の男が、二人してオレを追い詰める。 なんで、こんな見ず知らずの人たちの前で裸になんなきゃダメなの。 オレだって、一人の人間なのに。なんで… 『…出来ないの?』 「、で…きる…」 『あぁそう?じゃあさ、あんまもったいぶんない方がいーよ。この人たち、短気だからさ』 ワタシと違って、って。黄色い男がまたゲームに視線を向けたまま、そう言った。 なんだよ、なんなんだよそれ。 (裸くらい…っべつに、どってことない…) フーと長く大きな息を吐き、腹を括る。 こんなおもしろくもなんともない裸、べつに見られたところで減るもんでもない、だから大丈夫。 (、大丈夫…) 自分に言い聞かせ、勢い良く履いてたズボンと下着を一気に引き下ろした。 足を抜き、ソレを乱暴に放り投げる。 「、これでいいだろっ…」 『は?んだよその態度!』 そして同時に吐き捨てた言葉に反応した紫の男がまた立ち上がりかけた時。 『…いいよ?』 その隣で青の男が、ようやく口を開いた。 唇の端を柔らかく上げ、ほんの少し目尻を下げ、一見して優しい笑顔なのに、その印象を"冷たい"と感じるのは何故なんだろう。 『じゃあ、合格でいいってこと?悟流くん』 『ぇ、でもまだなんも見てねーじゃん』 『……』 赤の男と紫の男が順に青の男に話しかける。 黄色の男は相変わらずゲームに視線をやったまま、何も言うことはなかった。 "サトルクン"と呼ばれた男は椅子から立ち上がり、ゆっくりと歩き出す。 カツンカツンと鳴る靴音に、額から滲んだ汗がツツ、と頬を伝った。 『ふふ…もうわかったから、いいよ?』 そしてニッコリと微笑み、脱ぎ捨てた服をひょいと拾い、オレに手渡した。 「、ぁ…ありが 『それ、もう着なくていいから』 「え、 『捨てとくんだよ?』 「……は?」 そう言って、笑顔を消したその男の瞳は驚くほどに暗く、ヒヤリと何かが背筋を這う。 どう言えばいいのかわからない。 けれど逆らう気力さえ削がれてしまうような。 優しくて、それでいて冷たい。 見つめられれば溺れてしまいそうに澄んだその瞳の奥に、キュっと口を噤んだ。
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