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「おいって、返事くらいしろよ」
「……」
「お前が壊れたら俺がやべぇんだからさ、これくらいで壊れてんなよ?」
(は?なんだよそれ…)
おい、って軽く身体を揺する。
オレはそれにも応えることなく、視界に入ってるだけの一角をただぼんやりと見つめてるだけ。
男は小さく舌を打ち、心底面倒だとでも言いたげに大きく息を吐き、立ち上がる。
「ほら、タオル。とりあえず顔と身体拭いとけよ」
「汚ねぇから」、そう言ってタオルを放り投げた。
(汚くしたの、お前だろ…っ)
頭の中で文句を言ってはみるものの、口も身体も動かす気力が微塵も湧いて来ない。
そんなオレを見て、男はまた長く、わざとらしい溜め息を吐いた。
「…言っとくけど、俺優しい方よ?」
(なにがだよ…っくそ、ふざけんな…)
「まぁ、アキは知んねーけど、せいぜい後の二人に壊されないように願ってろよ」
せっかくのオモチャ、すぐ壊れたらつまんないじゃん、って。
ソイツはさもバカにしたように笑い、脱ぎ捨てた黒いシャツを拾い、「じゃあ、またな」って吐き捨て部屋を出て行った。
(人のこと、オモチャ扱いかよ…)
「っ…く、そ…なんだよ…っこれ…!」
ガチャンと音を立て扉が閉まる、同時に開きっぱなしの両目から一気に溢れ出した涙。
もう止まったかと思ってたのに、際限なく流れてく水が視界をぼやけさせた。
ダラダラ流れて薄い紫色したシーツを濡らしてく。
すぐに水溜りが出来て、ビチャビチャになったシーツ。
悔しくて悔しくて、破いてやろうと思ったけど震える手には力なんて入んなくて、その事実に余計に腹が立つんだ。
「…っいて、ぇ…よッ…!」
見知らぬ男に蹂躙され身体のあちこちが痛む。
足元のシーツは真っ赤に染まり、ソレが自分の身体から出たものだと思うとゾッとした。
尻にはもう感覚すらなくて、ただズキズキと痛むことだけを知らせてる。
動くことすら出来ず、止まらない涙もそのまま、いつの間にかオレは意識を失ってた…
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