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──ガン!
「っ…」
『おい、いつまで寝てんの』
揺れる空気に乗ってフワリと鼻を掠める。
甘いとも、清涼系とも取れるような、良い香り。
「、ん…」
いつの間に眠っていたのか。
どのくらいの間眠っていたのか。
突然の衝撃に目が覚めた。
目を開けると頭がクラクラと揺れる。
ぼやけた視界に映ったのは…
(…誰だっけ…ここ、どこだっけ…)
「ははっ、ボケてんなよ」
「!?ぃあ…っ!!」
黒い、短い髪の男が、見下すような視線を惜しげもなくオレに注いでいる。
刈り上げたサイドの髪がいっそう男の鋭さを演出しているようだ。
男はオレの髪を鷲掴み、思いきり引っ張った。
痛みに思わず声が出る、と共にようやく思い出した、現実。
「ペットの分際で寝てんじゃねぇよ」
「、は…なせっ…よ!!」
手錠で繋がれた両手でなんとか男の手を離そうと抵抗する。
けれどカチャカチャと音を立てるだけで、こんな状態じゃ抵抗らしい抵抗なんて出来るはずもなく。
結局そのまま引き摺られるようにして、紫の部屋から連れ出される。
そして二つほど左にある部屋へと無理矢理に連れ込まれた。
そこは一面燃えるような赤い壁に囲まれた部屋。
男は一直線にもう一つのドアへと歩いてく。
ガチャリとドアを開け、その中にオレを乱暴に放り込んだ。
「っ…!!」
そこはどうやらバスルームのようで、男はすぐさま蛇口をひねり、倒れこんだオレの頭上からは大量の水が降り注いだ。
「そのきったねぇカラダ、キレイにしてくんね?」
俺けっこう潔癖だからさぁ?って男はククっと喉を鳴らして笑った。
「、は…っ
(つ…めてぇ…)
髪を滑り身体へと流れてく水が容赦なく体温を奪う。
すぐさま震えだした身体。蒼く染まってく指先、触れ合いカタカタと音を立てる歯。
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