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「早くしろよ、暇じゃねーんだよ俺、お前と違って」
フンと鼻を鳴らして笑ったソイツはそう言い放った。
(こんな事してる時間あんなら暇じゃねーのかよ…)
「…は?なんだよその眼。なんか言いてぇことあるわけ?」
「べ…つに、っ!?ぅあ!!
ついつい思ったことが顔に出たのか、男は鋭い視線でオレを射抜く。
その迫力に思わず後ずさった。
が、そんなオレの髪をまたも掴み、男は風呂のタイルに思い切り頭を打ち付けた。
衝撃に一瞬頭がグラグラと揺れる。
男は笑みを消し、怒りを湛え、ギラギラと光る瞳でオレを睨み付けた。
「そんな顔、二度と出来なくしてやるよ」
「っ…」
(イヤだ、怖い)
刹那、頭にその二つの言葉が浮かび、咄嗟に走り出した。
正面に立つ男に体当たりをし、よろけたスキに逃げようと足を踏ん張る。
が、濡れたタイルに足を滑らせ、その行動は呆気なく失敗に終わる。
風呂場に倒れこんだオレの足首を、男は痛いほどに強く掴み、再びシャワーの下へと引き戻された。
バシャバシャと頭から水を被り、同じように水に濡れた男の髪が目元を隠してる。
その合間から覗いた鋭い眼光に、恐怖しか残らなかった。
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