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「…じゃあワタシ忙しいからさ、テキトーにしてなよ」
「、え…?」
黄色の男はどんなひどい仕打ちをするつもりなんだろう。そう構えたオレに、男はなんでもない風にそう言った。
思わず問い返すと、「好きにしてれば」ってまたオレを見ることもなく告げる。
拍子抜けしたというかなんと言えばいいのか。俄かには信じがたいが男は一向にオレを見るつもりはないらしい。
けど好きにするも何もオレには何もすることなんてないし、そもそもこの両手の自由を奪われた状態じゃやりたくても出来ない。
(って、アレ…?手錠、ない!?)
「…逃げたきゃ逃げりゃいいけどさ、もちろん見張りいるけどね」
「っ…」
いつの間にか自由になってる両手に気付き、咄嗟にベッドから下り走り出す。
全身を襲う激痛に膝をつきながらそれでも逃げようとするオレを追いかけるでもなく、男は相変わらずゲームの手を止めずにそう言った。
(そりゃ…そうだよな…)
「、ふっ…く、ちくしょ…っ」
また悔しさに涙して、そんな自分が嫌になる。
こんな見知らぬ男達に囚われ、蹂躙され、殴られ、飽きもせず泣いて。
その涙が自分を救ってくれることなんてないのに。
「まぁとりあえずさ、薬でも塗ってたら?痛いんでしょ、傷」
そう言って、ポイとオレの前に何かを放り投げる。
足元に投げられた茶色い袋、拾い上げ恐る恐る中を見れば、そこには薬らしきものがいくつか入ってあった。
軟骨や消毒液、絆創膏に包帯まで。
「、な…んで」
(なんでコイツ…コイツだってオレのことペットだと思ってるくせにっ…)
「言ったでしょ、傷とか嫌いなんですよ」
いぶかしむ表情を見せたのか、男はチラリとオレを見遣り、フンと鼻で笑った。
そしてまたゲームへと戻り、黙々と指を動かして。
静かなこの部屋に似つかわしくない明るい音楽だけが流れてる。
「あ、アンタはなんもしねぇの、かよ…」
こんな薬渡した所で、どうせ後でオレに突っ込んだり、殴ったり、布切れみたいに扱うんだろ?
「なにさ、して欲しいの?」
「!ちげぇよっ…」
男はフッと笑い、問い掛ける。
そんなわけない、男が男に組み伏せられる屈辱、抵抗すら出来ずただ震えて泣くしかない絶望。
思い出すことすら苦痛な記憶。
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