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『おーい!おったぞー!!』
「っ!?」
『誰か回れ、囲めって!』
「、くそっ…
『俺こっち行くー!』
(、嘘だろ…っもうかよ!?)
遠く、後ろの方から大きな声が飛んだ。
それに呼応するように方々から声が飛んで。
ガサガサと草を掻き分ける音があっちこっちから聞こえてくる。
(、逃げなきゃっ…逃げ、なきゃ!)
頭の中はそればっかりで、どこに向かって走れば良いのかさえわかってないのに。
ただ闇雲に脚を動かして、必死で呼吸をして。
走って。走って。走…
──ドンッ
「!?、ぅぐ…っ!!」
その時、突然の衝撃に思わずカクンと膝から崩折れた。
必死で走っていただけにその威力は凄まじく、脳までを激しく揺らす。
腹に感じる鋭い痛み、唐突に与えられた衝撃に驚き胃液がボタボタと地面に落ちた。
殴られた?蹴られた?それとも何かにぶつかった?
予想だにしなかったその衝撃に何が起こったのか全く理解が追いつかなかった。
「げほ…っぅ、げほ…!!」
とうとう地面に膝をついてしまったオレの前に一人、男が立った。
苦しくて顔が上げられない。その男の革靴がオレの前でピタリと止まる。
そして後ろからもまた一人、二人…ガサガサと草を踏みしめる足音。
(ダメ…もう動けな…ぃ)
『はい!つっかまえたー、さっすがトキちゃぁーん!!』
後ろからオレの背中にポンと手を置いた男はおどけたようにそう言った。
今の状況に似つかわしくない明るい声音が深い森に木霊する。
『さすがとちゃうわ、もし逃げられとったら俺ら死ぬで』
痛む腹を抑え、かろうじて顔を上げた。
前方から、恐らくオレを殴った男は右手首を左手でさすりながら確認するようにコキコキと動かし、そう返す。
『ほんまやで、あの人ら怒らしたらほんまに人殺しそうやもん』
また別の方向から声が飛んで。その声に賛同するように数人が「ははっ」って軽く笑った。
あーこれはもうどこにも逃げらんないや、って諦めると同時に、じゃあオレもきっともう殺されちゃうんだな、って…とうとう死を覚悟した。
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