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「なんもしねぇよ、診てるだけでしょ」
「っ…な、んで…」
「…見た目ほどひどくなさそーね、中は切れてないっぽいし」
「、ぁっ…ぅ、やだ…」
「薬塗ってりゃすぐ治んじゃないの」って、アキは軟膏を指に取り、ソコへと塗りつけた。
突然の冷たい感触に思わず腰を引く。
構わずスリスリと塗り付けられ、傷に入ってく軟膏が染みて微かな痛みが走る。
「、い、いた…ぃ」
「ちょっとくらい我慢しなよ」
「なんでっ…こんなこと…」
「さぁ、なんでだろね?」
「ぅ、ぁ、んんっ…
アキの指は中にまで入って薬を塗ってく。
違和感に思わず声が漏れた。
でも傷付ける気がないのがわかるから、オレも拒否することは諦め、されるがまま。
ただただ、同じ男にそんな場所を見られ、触れられる羞恥心だけはどうしようもなく、思わず顔を隠した。
「…アンタ、綺麗な身体してんね」
「、お…男の身体に興味ないんじゃね…のかよ」
「ないよ?まぁでも…アンタのその恥ずかしくてたまんないって顔はけっこう、イイかもね?」
「、なっ…!?」
そう言ってクスクスと笑ったアキは、さっきまでの顔とは少し違くて、なんだか普通に若い男のそれのようで。
だからオレは一体、どういう顔してればいいのかわかんなくなった。
「はい、できたよ。じゃあワタシ寝るからさ。まぁ好きにしてなよ。なんならゲームしててもいいし」
「へ…?」
「じゃ、おやすみー」
クスリのフタを閉め、袋にしまい、「はい、これあげる」ってオレに押し付ける。
そうしてアキはヒラヒラと手を振り、ベッドの上で小さく縮こまりオレを完全に放置したまま、毛布を頭からすっぽりとかぶる。
「ちょっと、な、なぁっ…
「……」
すぐに隣から聞こえだした寝息に驚き呼びかけた。
けれどすでに返事はなく、覗き込むとまるで子供のような寝顔で、スヤスヤと眠ってる。
(ほんとに寝る…?てか、逃げたらどうすんだよ…)
ゲームなんか、してる気分じゃないし。
かと言って逃げても無駄なの、わかってるし。
てか、なにこの状況…もうわけわかんない。
「ッ…変なやつ…」
なんなんだよ!って吐き捨てて。
仕方なくその意外にも幼い寝顔をしばらく見つめてた。
そしたらそのうちこっちまで眠くなってきて、知らないうちにオレはアキの隣で再び眠りに就いていた。
今までとは違う、どこか穏やかな気持ちで…
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