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──?日前──
(…なに、これ…どうなってんの…?)
気が付いてまず頭に浮かんだのは、それだけだった。
・
・
会社からの帰り道、もうすぐ家に着くってくらいの場所で。
ゆっくりとオレの隣を並走してた低くて長い、真っ黒な車が、曲がり角の手前でピタリと目の前に停車した。
自分とは確実に縁のないその車を一瞥し、通り過ぎようとしたオレの前に、運転席から出てきた男は行く先を遮るように前に立つ。
歳はだいたい同じくらいか、もしかしたら少し上くらいかな。
背格好はオレよりも少し低いくらいで。
「小鳥遊」と名乗ったその男は、恭しく頭を下げ、ニッコリと笑った。
唇から覗く八重歯が人当たりの良さを表しているようで、思わずこっちまで笑顔を作ってしまう。
そして"小鳥遊"は車のドアを開け、中に入るよう告げた。
突然の事にもちろん「なんで?」ってなるよね。
そしたら親の事で話があるって、律儀に名前まで出してくるから。
なんかあったのかなってオレも不安になってついつい車の中へ。
その安易な判断、行動がそもそもの間違い。
…すべての、始まりだった。
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