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扉が閉まった瞬間、クラクラと頭が揺れ出し、すぐに気付いた違和感。
けど「やばい」って思った時にはもう遅かった。
目の前は上も下も判断つかない程にぐるぐると回り、すぐに真っ黒く染まった。
そこからの記憶なんて何もない。
気が付けばすでにそこは車の中ではなく、どこだかもわからない場所で。
足が床に面しているという事実だけが、かろうじて正気を保たせた。
両腕には金属っぽいものが付けられ、動かしてもほんの少しの可動域しか与えられず。
カチャカチャとイヤな音が耳に届くだけ。
目は隠され、口には布のようなものを咥えされられ、後ろで縛られてる。
何がどうなっているのか想像もつかない。
ただただ、恐怖だけがこの身体を支配してる。
怖くて怖くて、脚は震え、恐怖に溢れ出した涙が目元を濡らしてく。
鼻から漏れる息は恐怖を表すかのように速く、荒い。
そのせいでろくに息が吸えなくて、余計に思考力を奪い、何もコントロールが出来ないんだ。
(どこ…っだれ、オレ、なんで…っ??)
自分を何人かの人間が取り巻いてる気配。
一人や二人じゃない。それも恐らく大人の男たち。
声を出すのも憚られ、ただ誰かがこの状況を説明してくれるのをひたすらに待ってた、長い時間。
「っ…!?」
唐突にトン、と背中を押され、歩くように促される。
反動で前に出た足はそのまま機械みたいに回り出して。
けど自分がちゃんと歩いてるのかどうかすらわかんない。
だって頭はグラグラ揺れてるし、こんなにも震えてる脚で上手く歩けるとは到底思えないのに。
唯一正常に機能する耳だけでどうにか情報を得ようとするのに、心臓の音が頭まで大きく響いて、それすらままならない。
けれどかろうじて入ってくる音達、必死に耳を澄ますべく呼吸を整える。
チャラチャラ鳴ってるのは鎖…?複数の靴音、並行して歩いてる。
微かな溜め息、誰か欠伸した?ゴホンと咳払い。足音が止まる。
直後、扉の開く音、そして閉まる音がいやに大きく響いた。
まるでアレだ、テレビで見た…死刑囚が死刑執行される時のような、あんな感じ。
(、なに…っ!?オレ…もしかしてし、死ぬ…の)
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