狩る者

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黒い衣装を身に纏った男とも女とも子供とも分からぬ者が、両手に刀を握り締め佇んでいる。 「貴様何者だぁ!!」 一際体格の良い1人の男が声を荒げ叫んだ。 重厚な鎧をまとった者たちは、叫んだ者を含めて全部で5名。各々が剣や弓など様々な武器を携えて身構える。 (…また、帝国の騎士団か。) 心の声など聞こえることはなく、男たちの目の前に現れた1人の人間からは表情を伺うことは叶わなかった。 「総員!奴は敵だ!突撃!」 その声に同調し、一斉に地面を蹴ると黒づくめの者に襲いかかった。 1人が槍を突き立て、もう1人が剣を振るう。 バックステップで軽やかにそれを避けるも、すでに籠の中の鳥状態。背後から弓矢と銃での攻撃を感知して、その者は腰を低く落とした後に、刀を振るう。 槍と剣で襲いかかってきた者たちをいとも簡単にその一振りで弾き飛ばし、バック転をしながら後ろにいる2人の武器に太刀を入れた。 銃も弓矢も真っ二つになったのを確認すると、今度は先程弾き飛ばした者たちの横を一瞬で通り抜ける。 感じたのは空気の切れたような音のみ。 だが次の瞬間には、槍も剣もヘシ折れて地面に落ちる。落ちた弾みで鳴る金属音が何とも虚しく耳に響いた。 事実上、これで相手は丸腰状態。 ゆっくりと最初に叫んだ者の所へ歩みを進める。その間武器を無くした者たちはその場で身動きすらできずに立ち尽くしていた。 「き…貴様は…い…一体…何者…なんだ?」 やっとの思いで出した声なのだろう。聞き取るのも難しいくらいに男の声は掠れていた。 その問いに返事をすることも無く、首筋に両刀を当てる。 『最後に言い残すことはあるか?』 まるで変声期でも使ってるかのような機械的な声色に、その場の5人は息を呑んだ。声色を変えていても分かるくらいの殺気が男から出ていた。 「まさか…貴様が…闇の暗殺者…?」 『答える義務はない。何故俺を探している。』 「闇の暗殺者を抹殺せよと、命が下ったからだ。」 『ならば、今ここでお前たちが死んでも文句は言えまい。俺を追ってきた罰、これは帝国に対しての戦線布告だ。』 言い終えるよりも先に男の首をはね、残りの4人をいとも簡単に切り捨てると、刀についた血を振り落とした。
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