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混沌たる闇の中で、淡く金色の光を漏らし麒麟(チーリン)が眠る。
閉じられた長き睫毛は薄紅の頬に色濃く影を落とし、一糸まとわぬ滑らかな肢体を無防備に我に預ける。
願わくは永遠にこのままで。
我の傍で、安寧の吐息を繰り返し目覚めたもうな。
愛しき麒麟。憎き麒麟。
お前はいつの世も我を壊す。
もしも目覚めたならば、此度は必ずや我がそなたを壊してみせよう。
さすれば何かが変わるやもしれぬ。我とそなた、相反する陰陽の理、覆るやもしれぬ。
だが今は、柔らかな肩と胸を抱いていられるこの刹那が愛しい。
誰も、何物も、邪魔だては許さぬ。
天子よ、麒麟に近づくな──!
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