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「よろしい自己紹介はこれで十分だ。諸君には明日から『須佐乃男(すさのお)』の操縦訓練をシミュレーターでおこなってもらう。今夜は1900(ヒトキュウマルマル)時より、当北不二総合演習場主催の歓迎懇親会を開催するので参加してもらいたい」
逆島少佐がそういうと、サイコが右手をあげた。漆黒の軍服が濡れたように光っている。
「私も参加しなければなりませんか。まだ兄の喪に服している最中ですが」
東園寺(とうおんじ)崋山(かざん)は死んだ。自分がこの手で打ち殺した。タツオの胸は日乃元海溝のように冷たく沈んだ。タツオの兄は容赦なくいう。
「全員参加だ。これは上官からの命令である」
「はいっ」
サイコも含め新任の少尉たちの返事がそろった。柳瀬(やなせ)情報保全部員が口を開いた。
「きみたちはまだことの重大さがわかっていないようだな。この部屋では、作戦部の逆島少佐とわたしだけしか上官がいないように思えるだろうが、これを見るといい」
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