5(承前)

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 楕円テーブルの3Dホログラフが日乃元南海の地図から、作戦指揮所に切り替わった。タツオは見たことのない室内である。東島進駐官養成高校の地下にあったものに似ているが、こちらのほうが規模は数倍もある。勲章を胸にさげた将軍たちが一列に並んで座り、こちらに正対していた。中央には新聞やテレビで顔を見ぬ日はない老人が手を組んでいた。進駐軍総司令官・西原(にしはら)征四郎(せいしろう)元帥だった。頬のひげが純白で、ひどく年老いて見えるが、まだ50代の若さだという。西原元帥は皇族出身だ。ということはこの指揮所は、東都の進駐軍本部の地下数百メートルの大深度にある最高作戦指揮所なのだろう。この映像一枚を得るために世界中のスパイが命を投げ出してもいいと思う最高機密だ。  老人がゆったりという。 「総司令の西原である。きみたちが『須佐乃男』の操縦者候補か。孫のような十代の若者に、この国の未来を託(たく)すとは、我ながら情けない。だが、ことここに及んでは泣き言などいっていられない。皇国の存亡はきみたちの肩にかかっている。そこにいる逆島少佐と柳瀬部員の命令をわたしの命令だと思って、訓練に励んでもらいたい。目的はただひとつだ」  そこで西原総司令が口を閉じ、目を細めた。
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