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「よくこんなに早く帰ってきたな。部屋が狭くなってかなわないぜ」  クニがテルの広い肩をぽんとたたいた。養成高校では4人部屋だったが、この演習場では相部屋である。クニとテル、ジョージとタツオの部屋割りになっていた。4人は今、ジョージとタツオの部屋に集合している。タツオがいった。 「その右手はどれくらい動かせるんだ」  テルが鈍く光る自分の右手を見つめてる。静かにモーターがうなり金属製の軍用義手が手首を内側に折り曲げた。蝶の羽でもつまむように、親指と中指が重なった。カチンッと冷たい音がする。 「ぜんぜんだめだな。細かな作業がむずかしいんだ。箸(はし)をつかうとか、折り紙をおるとか、ピアノを弾くなんてのは、とてもじゃないがまだ何ヵ月もかかるだろう。金属のフレームごとピアノを解体するのは得意なんだがな」
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