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テルが首をかしげた。
「おれだってこんな義手をつけるまでは聞いたことないさ。接近戦ではナイフや銃はあまり役に立たない。もみあっているうちに、自分を刺したり撃ったりする可能性が高いからな。ウラジミールの得意技は『つかむ』ことだった。敵の首か腹をつかむ。そして、そのままバケモノじみた握力で内部の組織ごと握り潰す。つかんで握る。それだけでUKはターゲットを暗殺できたのさ」
テルが低く口笛を吹いた。
「それで200人以上か」
「ああ、情報部に正式な記録が残っている。UKが暗殺した敵の総数は216名。すべて握殺だ」
ジョージが口を開いた。
「だけどその男は軍用義手ではなかったんだよね」
「そうだ。握力は200キロ近かったという話だが、自分のもって生まれた力だった。まあ天然のバケモノだな」
居室の空気が静まった。誰も口を開かない。テルがあざけるようにいう。
「だけど、おれの右手には、その旧ソビエチカのバケモノの2倍以上の力があるんだよ。相手が誰でもつかんだ瞬間に殺せるのさ。おれはバケモノ以上にバケモノに、つい先週なっちまった」
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