きみがすき

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「ええ、今トルコにいまして……。」 「トルコ?!」 突然思いもよらない単語が出てきて、びっくりして大きな声が出てしまう。 トルコって、何がある? カッパドキア?伸びるアイス? 「と、トロイの木馬……。」 「あー、そうですね。」 楽しそうに笑うのを、ホッコリとした気分で眺める。この笑顔が見られたら、もう父親の仕事なんてどうでもよくなってしまう。 「今はトルコのオーケストラでヴァイオリンを弾いてます。一応、コンマスですね。」 「バイオリニストなんですか!」 お祖父さんがバイオリン職人なんだし、言われてみればとてもしっくりくる。 てか、トルコにもオーケストラとかあるんだ。いや、それはあるか。 「もう、ずいぶん前から世界中のオケを渡り歩いているので、年一回くらいしか会うことないんです。」 決して寂しそうでもなく、なんて事ないように言うが……、たぶんその通りなんだろう。 一緒にいない生活が長くて、それが普通になってしまった。 「そういえば、よくここに、お祖父さんの家に預けられてたって言ってましたね。」 「僕が小学生の頃はそうですね。中学になってからは部活とか友達とか色々あったので、率先してここに来てましたし。」
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