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「ありがとうございます。」
いいえ、と微笑む顔が光り輝くように眩しい。
思わずポットを持たない左手を掴むと、えっ、と彼の動きが止まった。
「崎谷くん……?」
戸惑いと、何か別の感情でゆっくり頬が染まる。
その感情が、自分に対する『恋愛感情』なら嬉しい。そして、おそらくそれで合っているはずだ。
「有坂さん、今日はこの後お客さん来る予定あるんですか?」
「……いえ…っ、特に予定は……!」
あいも変わらず小さなスキンシップにさえ真っ赤になって、ギクシャクと薄茶色の瞳を右へ左へと彷徨わせた。
可愛い。
ゆっくり手を引くと、ポットを置いておずおずと隣に立った。恥ずかしそうに視線を外したまま、それでも指を絡めれば素直に握り返してくれた。
そっと力を入れて促せば、戸惑いながらも膝へと座ってくれる。
「有坂さん……、いい匂いします。」
「ひぁっ……!」
耳元でそっと囁けば、ピクリと首を竦めるのも可愛い。
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