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女の子のように柔らかくはない。
だけど、触れたくなってしまう。
頬に、背中に、口唇に。
指を伸ばしてそれに触れれば、戸惑いながらも小さく笑ってくれる。
したいな。キス。
薄ピンクにふっくらと咲いた、バラの花みたいな口唇は、きっと俺の欲望なんてお見通しで。
だけど逃げる素振りはない。
「……崎谷くん……、少し、恥ずかしい……。」
真っ赤になって俯くけれど、それすら俺を煽るだけだ。
「目をつむったら恥ずかしくないかもしれないですよ。」
そう言ってそっと背中に手を当てて、膝から落ちないよう支えた。
「そ、うかな……。」
変なところで素直さを発揮して、ギュと目を閉じた。
……これは、もうしていいって事じゃないか?
キスしても、いいんだよな?
高鳴る鼓動を悟られないように、ゆっくりと口唇を寄せた。
その頃窓の外では、鈴を鳴らすべきか帰るべきか、真剣に悩む久世春人がいたーー。
【END】
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