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「それにしても崎谷くんのバイオリン、いい音よね。」 コンミス (女性のコンサートマスターの事) の山田さんが横から話しかけてきた。 音大出で、今は主婦をしながらここでバイオリンを弾いているらしい。 「ありがとうございます。実はこれ、タダで譲っていただいたんですよ。」 「えっっ?タダ?」 そこにいた木村さん、中井さん、山田さんが綺麗にハモる。 それはそうだ。バイオリンはどんなに安くても万単位の楽器で、それがそれなりの音がするなら何十万は下らないのが常識だ。 「父親が仕事でイタリア行った時、知り合った人に貰ったんですよ。」 「そんな簡単に?」 「よくは知らないんですけどね。ちょうど俺も買い替え考えてて、親父もそれ知ってましたから。」 ケースにも入っていないバイオリンを、米袋と一緒に不織布の袋に入れて、イタリアから帰ってきた時は驚いた。
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