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それは男の声ではなく、
動物の声ではなく、
また決して成人女性の声ではない。
それが背後から聞こえる。
背中を圧する存在。
ずっしりと、
またヌメヌメと、
ぴちゃぴちゃと、
エントランスのガラス壁に、
この世のものとは思えぬ眩煌を反射する。
光の乱舞。
光彩陸離! 交じりあい、
熔けあい、
闇の圧力を増加させ……。
悲鳴が聞こえている。
細く、
長く、
痛々しく、
けれども何処かに嬌声を交え、
悲鳴が耳を引き裂いていく。
液体のようにドロドロと粘つきながら外耳を辿り、
ぷるんと身体を震わせ、
その内側で振動を増し、
やがて衝撃が鼓膜に達して爆発する。
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