悪夢

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 そこには何もいなくて、 けれども少女がナニモノかに絡まれていて、 包まれていて、 含まれていて、 その口からは悲鳴が漏れていて、 悲鳴には無限の色彩が溶け込んでいて、 ガラスの反射が少女の未発達のいくつかの部分を緩やかに隠し、 ゆらし、 黒く染め上げ、 淡く浮かし、 ついで露にし、 腫れ物に触るように優しく、 かつ弱者をいたぶるように荒々しく、 その身体に触れ、 かつ締め上げている。  それは何だったのだ? 恐ろしい考えがぼくを襲う。 いやだ、 いやだ、 いやだ! そんなことあるはずがない。  でも――  そのとき視点が入れ代わる。 目の前で腕を捕まれている貧相な若い男は誰だ? それはぼくか? ぼくなのか? そんなことがあっていいのか?  ならば――  少女を弄ぶナニモノかが、 ぼく? ぼくの? ぼくの「……」?  欲するから、 そいつがやって来る? 欲するからココロがそいつと一体化する? ぼくが欲しているのは外界じゃない! そいつが欲しているのは現実じゃない! そいつが欲しているのはリアルな存在じゃない!  脳がそれを見せているのさ、 と告げる誰か。
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