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~12年前~
真っ暗な部屋の中に響く鎖の音。それと動く影。
影はコツコツと音を鳴らし近づいてくる足音に焦るように手を動かした。
「…っ‥‥」
十分に食事を与えられなかった少年達はそこら辺の子供たちより小さかった。
「外れないよっ‥‥」
んんーと唸り声を出しながらも少年は必死になってもう1人の少年に付けられている鎖を外そうとしていた。
少年は苦笑いをし、やがて諦めたように笑って首を振った。
「もーいいんだよ、アッシュだけでも逃げて?」
「どーして!!嫌だよ!!」
嫌々と首を縦には振らなかった。
少年はアッシュに抱き着いて、背中をぽんぽんと落ち着かせるように叩いた。
「うぅ‥‥っ」
「折角の逃げるチャンスなんだよ?もー辛い思いするのはやだよ‥‥」
目を真っ赤にして釣られるように泣く少年。
「大丈夫。直ぐにハンス達が来てくれるから。そしたら直ぐに追い掛けるね」
お互いの額と額を合わせ存在を確認するかのよう。
「絶対に振り返っちゃ駄目だよ。何が聞こえても走り続けてね」
背中を押して窓際に追いやった。
「でも!!」
「これが最後じゃないよ。」
少年は笑顔で答えた。
ギィーっと扉が開いて白い白衣を着た職員達が銃を持ち立っていた。
少年は身体をそっちに向けると能力を使った。
「またね、アッシュ」
「必ず迎えに行くからっ」
涙を流し、振り向かず能力を使い窓から白い虎が飛び降りた。
職員達は少年の他に3人捕まえ外に出ていった虎(少年)を捕まえるように指示をした。
これから始まる長い日々は、きっと誰かが仕組んだ滑稽な御伽話だったんだ。
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