裏切り

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私は本棚に身を潜めた。 こうやってみると、本当に絵になる…。 美男美女。 それに比べたら…私はホントに子ども。 遠夜はどこが良かったんだろう? 前世の約束があったからだよね……? そうじゃなきゃ私なんて選ばないよね? 「遠夜…」 「こんなとこ、呼び出して何の用だ?」 「…ずいぶんと冷たいわね。家に来ればあんなに優しいのに。彼女がいるから?」 家?湯沢先生の家に行ってるの? 「……奈乃夏」 「……遠夜も、女の趣味が変わったのね」 湯沢先生はクスクスと笑う。 それって……私のこと、だよね。 「……話ってなんだ?」 「……ねぇ、やり直さない?私たち」 ………………! 「子どもっぽいヤツとつきあわないんじゃなかったのか?」 「あら。それは、3年前のことでしょ?」 「そうやって、振ったのはお前だろ?」 「今は違うわ。いい男に成長したわね」 「……そりゃどーも」 「別に、今の子とつきあっていても構わないわ。つきあっているうちに私の方がいいってわかるから」 そう言って遠夜の首に手を回す。 「ずいぶんな自信だな」 「私はあんな子どもと違うもの。 見ていて必死なの、伝わってくるわ。甲斐甲斐しくお弁当作ってきて。尽くしてますって感じ。 ああいうの、遠夜好きじゃないって前に言ってたじゃない。迷惑だって」 クスクスとバカにするような笑い。 私のしていることを否定する言葉。 「あぁ。そうだな」 そうして二人はキスを交わす。 …………!!! それが……遠夜の……本当の……気持ち……? ポタリ。 鼻がツーンとして目頭が熱くなり、目から涙が溢れる。 視界が歪み、それ以上、その場にいたくなくて。 二人に見つからないように、裏口からそっと抜けて家まで帰った…………。
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