不安

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遠夜と付き合い始めて一年がたった。 相変わらず、遠夜は優しい。 甘えさせてくれるし、甘えてくれる。 そんなくすぐったい毎日を過ごしていた。 遠夜に不安や不満を抱くことはなかった。 遠夜の部屋であるものを見つけるまでは……。 「紫桜」 「なに?」 いつものように、夕飯を作っているとキッチンに遠夜がきて、後ろから抱き締められる。 「まだ、かかる?」 「あと、盛り付けるだけよ。待ってて」 「……わかった」 するりと遠夜の腕が解ける。 二人の時はいつもこんな感じ。 学校では、ぶっきらぼう。 まぁ、無愛想とも言うけれど。 この容姿だからクールでかっこいい! って、人気あるんだけどね。 「出来たよー」 「お、うまそー!」 遠夜は椅子に座る前に触れるだけのキスをする。 「もう」 董威様にはこんな1面はなかった。 自分にも他人にも厳しく、威厳があって凛々しい。 甘えられない、甘えたことのない方だった。 「いただきます」 今日は魚のムニエル。 遠夜は意外と魚も好きだからお肉と魚の料理を交互に作ってる。 「旨い。やっぱ、紫桜は料理上手だな」 「大袈裟なんだから。人並みだよ」 「そうか?」 それでも、美味しいと言われれば嬉しい。 今まではずっと、一人で食べていたから。 ご飯を食べ終わると、遠夜が洗い物をしてくれる。 「寛いででいいからな」 「うん」 改めて、部屋のなかを見るととてもきれいに片付けられてる。 男の子の部屋なのに。 まぁ、あんまり物がないって言うのもあるけどね。 「あ、遠夜。本、借りたいんだけど。部屋に行っていいかな?」 「あぁ。かまわない」 「ありがとう」 私は、リビングから遠夜の部屋に行く。 遠夜の部屋には本棚があって、そこには本がたくさんある。 借りたい本を見つけて本を開くと、そこには写真が挟まっていた。 「え……」 そこには、遠夜と…黒髪ロングの綺麗な女の人が二人で映った写真。 どうみても、それは、カップルの写真。 遠夜は女の人の肩を抱いてる。 子供っぽい私とは違い、大人の女性。 遠夜は……こういう大人の女性がいいのかな…。 写真の裏には名前が書いていた。 奈乃夏。 これが、この人の名前。 ズキンっ。 心がえぐられたみたいに痛い。 遠夜はかっこいいし、彼女がいなかったとは思いづらい。 キスだって慣れてたし! この人とも…私にするみたいにキスしてた……んだよね……。 そう思ったら、胸が苦しくなった。
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