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「ありがとう。紫桜」
……和人も苦しんだと思うから……。
これ以上は責められない。
私はその後も校内案内を続けた。
お昼休み。
図書館の近くの中庭で、遠夜とお弁当を開ける。
「今日ね、唐揚げだよ。遠夜、好きでしょ?」
「……あぁ」
朝からずっと、こんな感じ。上の空。
……そんなに気になる?
湯沢先生のこと。
「紫桜」
「ん?」
「さっき、あいつとなんもなかったのか?」
「え?」
「……あいつだろ?紫桜の元カレ」
「……なんで知ってるの?」
私、言ったことなかったはず、だけど…。
「……前にアルバムで見た」
「……そう。うん、元カレ。でも、校内案内しただけだよ。先生に頼まれたから」
「それだけか?」
「……それだけよ。どうしたの?」
「……彼女が他の男と二人でいたら、気になるに決まってるだろ」
「……だから、さっき、不機嫌だったの?」
さっき、教室に戻ったとき、すっごい不機嫌だった。
「……当たり前だろ」
そう言って軽くキスされる。
「……もう。ここ、学校」
「……知ってるよ」
お弁当を食べ始める。
「唐揚げ、うまいな」
「唐揚げ、好きだもんね」
「あぁ。紫桜のは、特に好き」
「ありがとう。また、明日、作ってくるね」
「あぁ…」
上の空の原因は和人のことだけじゃないよね?
……ねぇ、遠夜。
何を考えているの……?
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