波乱

4/5
前へ
/23ページ
次へ
「ありがとう。紫桜」 ……和人も苦しんだと思うから……。 これ以上は責められない。 私はその後も校内案内を続けた。 お昼休み。 図書館の近くの中庭で、遠夜とお弁当を開ける。 「今日ね、唐揚げだよ。遠夜、好きでしょ?」 「……あぁ」 朝からずっと、こんな感じ。上の空。 ……そんなに気になる? 湯沢先生のこと。 「紫桜」 「ん?」 「さっき、あいつとなんもなかったのか?」 「え?」 「……あいつだろ?紫桜の元カレ」 「……なんで知ってるの?」 私、言ったことなかったはず、だけど…。 「……前にアルバムで見た」 「……そう。うん、元カレ。でも、校内案内しただけだよ。先生に頼まれたから」 「それだけか?」 「……それだけよ。どうしたの?」 「……彼女が他の男と二人でいたら、気になるに決まってるだろ」 「……だから、さっき、不機嫌だったの?」 さっき、教室に戻ったとき、すっごい不機嫌だった。 「……当たり前だろ」 そう言って軽くキスされる。 「……もう。ここ、学校」 「……知ってるよ」 お弁当を食べ始める。 「唐揚げ、うまいな」 「唐揚げ、好きだもんね」 「あぁ。紫桜のは、特に好き」 「ありがとう。また、明日、作ってくるね」 「あぁ…」 上の空の原因は和人のことだけじゃないよね? ……ねぇ、遠夜。 何を考えているの……?
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加