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「無駄じゃ無駄じゃ!オラんとこの親父が滝まで行ったども、魚一匹いねえって……」
「あの滝よりさらに上流じゃ。えれぇ山奥にあるっちゅう、“天昇りの滝”じゃあ」
その場にいた男達は顔色を変え、ヒソヒソと話を始めただ。
まあ、無理もない話じゃて。
この村の言い伝えに関わってくるんじゃからな。
「源兵衛よ、天昇りの滝っつうと例の淵があるべ。まさかおめえ……」
「あそこはなんねえ!あの淵の魚を獲ろうとする輩は、片っ端から……」
「ぶわははははっ~!腰抜けどもがぁ。あんなガキの頃に聞いた言い伝えを、まぁだ信じてるのか?」
源兵衛はそのどっしりした腹をバチンと叩き、仰け反るように大笑いしたんじゃ。
「腰抜けに用はねえ。来たいやつだけ来りゃええわ」
一人一人を見下ろし『どうじゃ?』と試すように見回す。
「お……オラ…行くっ!」
「は?次郎吉が?あはははは……」
儂が真っ先に手を挙げたもんじゃから、源兵衛も他のやつらも吹き出しちまった。
「小僧に用はねえ」
「小僧でねえ!オラはもう立派な男だ!!連れてってくれろ!」
「ガキのお遊びじゃねえんだ。やめれやめれ」
「オラ、魚獲ったら、おっ母に団子食わせてやりてえんだ!おっ母はいつもオラ達ばかり食わしてくれて、自分は食わねえから……」
そんな儂を見て、源兵衛は諦めたように『わかった』と言ったんじゃ。
「日の出前に出るでよ。遅れるでねえぞ」
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