第1章

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男が言う。 「今から10分与える。この時計で10時までに支度を済ませろ。ちなみに家具や電化製品などの荷物はあとで下級ドームに届ける手はずになっている」 10分ってなんだよ、もういくのか。決定なのか。指示を拒んだらどうなる。 いろいろな疑問が頭に浮かんだ。 でも、口を開きたくなかった。 僕は言われるがまま身支度を済ませた。 この世界から出ていく。人生の一大事だ。なのにやることがない。 別れの言葉を言う相手さえいない。僕が幼い時に両親は死んだし、春のバカ野郎にも会いたくはない。もちろん内石さんにだって……内石さんは会ってもいいかな。 署名したのは何かの間違いかもしれない。 そんなわけ……ねぇか ちくしょう。こんな世界なんてこっちから願い下げだ。 そうだろ? 僕は何もしていないのに。 何もしてない。 何もしてないんだ! ふざけるな!
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