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「マルト、起きて」
意識の外から声が聞こえる。
「起きて」
声と同時に頬を撫でられる。
撫でているのは天使なのだろうか。
僕は死んだのかな。
これでもう、つらい人生を生きなくていいんだ。
よかった。天使に会えてよかった。
僕は天国でよかったなぁ。
天使の手は少し冷たく、カサカサしていた。
まてまて。
カサカサだけじゃない。ざらついている部分もあるぞ。
いやな感触の手だな。
天使ってこういうものなのかもな
次の瞬間、ピシッと音をたてて頬を叩かれた。
僕は悲鳴を上げて飛び起きた。
「急がないと仕事に遅刻するよ」
目の前で忠告する者は草だった。天使ではなく、草。白ではなく緑色だ。
高さ1メートルほどの草がゆらゆらと揺れている。
彼の名前は・・・彼と紹介しても男かはまだ聞いてはいないのだが。そもそもそんな区分があるのかも分からいのだが、彼の名前はソウである。
ソウというのはあだ名だ。お察しのように草だからソウ。
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