第1章

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「マルト、起きて」 意識の外から声が聞こえる。 「起きて」 声と同時に頬を撫でられる。 撫でているのは天使なのだろうか。 僕は死んだのかな。 これでもう、つらい人生を生きなくていいんだ。 よかった。天使に会えてよかった。 僕は天国でよかったなぁ。 天使の手は少し冷たく、カサカサしていた。 まてまて。 カサカサだけじゃない。ざらついている部分もあるぞ。 いやな感触の手だな。 天使ってこういうものなのかもな 次の瞬間、ピシッと音をたてて頬を叩かれた。 僕は悲鳴を上げて飛び起きた。 「急がないと仕事に遅刻するよ」 目の前で忠告する者は草だった。天使ではなく、草。白ではなく緑色だ。 高さ1メートルほどの草がゆらゆらと揺れている。 彼の名前は・・・彼と紹介しても男かはまだ聞いてはいないのだが。そもそもそんな区分があるのかも分からいのだが、彼の名前はソウである。 ソウというのはあだ名だ。お察しのように草だからソウ。
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