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『首吊り自殺』
そう決めつけるには、あまりに不自然なその姿。
彼は楠の枝によって、首を締め付けられているかのように、ぶら下がっていたのだ。
“川端達”は、全てを知っているかのような先生方に引きずられ、その場から連れ戻された。
その時、古くからこの学校に勤務している教頭の姿が目に入った。
そよ風によって葉掠れがする合間に、彼の呟きが聞こえてきた。
「前回から五年か。ようやく、落ち着いてきたと思ったら余計なことを。全く。悪ぶっているヤツやお調子者が、悪ふざけで手を出していい物では無いというのに……」
大きなため息をつくと、彼は忌々しそうに御神木を見上げた。
「今回は目撃者が多すぎる。前回は、周りの協力で“いじめを苦にしての自殺”ということで、なんとか揉み消したが、今回ばかりは……。また、祟りだの呪いだの……」
憂鬱そうな教頭のぼやきが、途中から僕の耳には入ってこなくなった。
“五年前”
“お調子者”
“いじめによる自殺”
頭の中を、言葉がグルグルと支配していく。
ザザザァァァァァッ
いきなり大きく風が吹くと、楠はその葉を。
その枝を大きく揺らした。
その振動で、ぶら下がっている高橋の体も、ブラリブラリと左右に揺れる。
そう……だ。
あの時の“僕”のようだ。
楠の葉は、さらに赤く色を染め、その葉が擦れの音は、久しぶりに捕まえた獲物を喜び、そして、愚かな人間を嘲笑っているかのようであった。
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