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校舎裏の片隅に、樹齢五百年年以上の大きな楠がある。
これがまた、いわくつき。
以前、校舎を改装する時、ついでに校門の位置も変えようという話しになり、この楠を切り倒そうとしたところ、その工事の関係者五人が事故死。
あるいは、狂い死にしたとか。
大昔。
それこそ戦国時代には、戦いに敗れた武士の首が、この楠に幾つもぶら下げられていただとか。
様々な言い伝えがあり、それが理由で、触れる者全てに災厄を齎すと言われているのだ。
そのことを確証づけるかのように、この楠だけがもつ特徴が一つある。
秋でも冬でも青々と葉を繁らせ、春から初夏にかけて葉を赤く染め、落葉するものが普通の楠。
ところが、件の楠は落葉の季節も何もかも関係なく、一年中、真っ赤な葉を繁らせている。
その姿は、神々しくも不気味で。
まるで、人々の血を吸って成長してきたと言わんばかりである。
お陰で、件の楠は柵に囲まれ、立ち入り禁止の札が立てかけられているが、そんな事をしなくたって、噂を恐れて誰も近付く者はいなかった。
生徒は勿論の事、教師や来賓の方々も。
とはいえ、「祟り」だの「呪い」だのといった噂があれば、必ず“ヤンチャ”する奴も出てくるわけで。
うちのクラスの高橋が、まさにその“ヤンチャ”する奴。
体も態度も大きいだけじゃなく、見た目通りの怪力。
同じ学年の中では向かうところ敵無し。
親がPTA会長で、地元の有力者の息子なので、先生すらビクつく始末。
彼の恵まれた環境、恵まれた体格は、高橋を増長させる原因となり、手が付けられない悪ガキになっていた。
そんな高橋ですら、不気味に感じていたのか、あの楠だけには近付かなかったのだが、ある日を境に、状況が一変する。
暴君高橋が同じクラスの吉田にイチャモンをつけていた時の事だった。
周りは、「今度は吉田がターゲットか……」と、気の毒そうな顏で二人の様子を遠巻きに見ていた。
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