33人が本棚に入れています
本棚に追加
「うるせぇぇぇぇぇぇ! なぁろぉ!」
正気を失い、目の前にあった楠の枝を勢いよく折ってしまった。
乾いた音が鳴り響いた後、周りは絶句した。
散々焚き付けていた吉田ですら、口を半開きにして一点を見つめている。
その様子からも、これは流石に“やばい”と思ったのだろう。
なぜなら、高橋が折った枝から、赤い汁が、ポトリ、ポトリ……と、垂れていたのだから。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁあ」
僕達は一目散にその場から逃げた。
勿論、高橋も。
とっくに授業は始まっていたので、当然のことながら、教室に走り逃げてきた僕らはこっぴどく先生に叱られた。
しかし。
皆で一緒に逃げてきた筈だというのに。
いいや。
本当に一緒に逃げてきたのか?
僕達は校舎裏から教室に戻る間に、高橋の後ろ姿を見たか?
あいつは運動神経だっていい。
いくら逃げ遅れたとしても、のろまな僕なんて、すぐに追いつき追い抜く筈だ。
彼がどこから居なくなったのかを思い出そうとするが、混乱する頭ではどうにも思い出す事が出来ない。
ただ、高橋の姿だけが、教室のどこにも無かった。
最初のコメントを投稿しよう!