御神木

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 ここからでは何も見えない。  しかし僕達は、その楠に近付く度に強くなる不快な臭い。  そして、不快な羽音に気が付いていた。 “近づくな!”  僕は確かに、その時、そう叫んだ筈だ。  けれど、なぜだろう?  見るな。  見てはいけない。  頭では分かっているのに、どうしても人は見てしまうんだ。 「うわぁあぁぁ!」  またもや大きな悲鳴が響き渡る。  最初の大きな悲鳴で既に近くまで来ていた先生達が、少し離れた場所から、“まさか!”といった驚愕の表情でこちらを見て、立ち尽くしているのが分かる。  そうなるのも無理はない。  いくら僕たちよりは離れた場所にいるからと言っても、彼らだって目にしてしまったのだから。  少し舌を出した口からは涎を垂らし、これでもかというくらいに見開いた目からは、目玉が少し飛び出している高橋。  その彼が、有り得ないくらいに首が伸び切らせたまま、楠の太い枝に、手足をダラリと下げて、ぶら下がっている姿を教師たちも目にしてしまったのだから。
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