33人が本棚に入れています
本棚に追加
ここからでは何も見えない。
しかし僕達は、その楠に近付く度に強くなる不快な臭い。
そして、不快な羽音に気が付いていた。
“近づくな!”
僕は確かに、その時、そう叫んだ筈だ。
けれど、なぜだろう?
見るな。
見てはいけない。
頭では分かっているのに、どうしても人は見てしまうんだ。
「うわぁあぁぁ!」
またもや大きな悲鳴が響き渡る。
最初の大きな悲鳴で既に近くまで来ていた先生達が、少し離れた場所から、“まさか!”といった驚愕の表情でこちらを見て、立ち尽くしているのが分かる。
そうなるのも無理はない。
いくら僕たちよりは離れた場所にいるからと言っても、彼らだって目にしてしまったのだから。
少し舌を出した口からは涎を垂らし、これでもかというくらいに見開いた目からは、目玉が少し飛び出している高橋。
その彼が、有り得ないくらいに首が伸び切らせたまま、楠の太い枝に、手足をダラリと下げて、ぶら下がっている姿を教師たちも目にしてしまったのだから。
最初のコメントを投稿しよう!