第1章

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 僕は古びた公園の錆付いたベンチに横になっている。  学生服が汚れるかもしれない。稀に行き交う人の視線をあびるかもしれない。どうでも良いと思いたいが少し気になる。  もう肌寒い時期ではあった。しかし、必要以上に燦々と降り注ぐ太陽が僕に汗を掻かせ眠りを妨げた。  顔をしかめながら上体を起こす。暖かくなったブレザーを脱いでベンチの背もたれにかけた。遠方にある煙突から立ち昇っていく黒い煙を、しばらくの間、眺めた。  ふと、公園の一角に設けてある花壇に目がいった。みすぼらしい公園、錆付いた遊具、手入れが行き届いてない雑草だらけの土地。その中、花壇の一角は明るくて綺麗で不釣合いだった。  花が植えてある場所だけ、雑草もなく、枯れてもいない。  誰かが育てているんだ。そう思った。  今度は花を眺め続ける。僕は、それほど花が好きじゃない。見かけも感嘆するほど綺麗ではないし、虫もいる。虫は嫌いだった。  じゃあ、どうして僕の中に花が綺麗だと認識している部分があるのだろうか。  僕はくだらない発見をするために一本の花を観察しだした。  黄色や白の花びらを見て、単純に色合いで判断しているのかもしれないと考える。僕はダークな色の花は綺麗と思わないのだろう。  本当にそうかな……  視界にスカートの端が映った。僕は目線をそちらにずらした。  じょうろを持った少女がスタスタと花壇に近づいていく。  花を育てていたのは彼女か。  少女は花に水をかけた。屈んで、花を眺める。  いい子だと思った。同時に新発見したと鳥肌を立たせた。  僕の中に花を育てている人は優しいという安易なイメージがある。そのイメージが花に好印象を持たせているのではないかと結論付けたのだ。  自然や人の優しさで育つ花である。綺麗だと思って不思議ではない。  自分なりの納得を得て、勝手に首肯する。そして少女を微笑ましく見ていた。  突如、穏やかな雰囲気にそぐわない、犬の喚き声が聞こえてくる。吠える声量は次第に大きくなり、公園に駆けてきているのが分かる。公園に現れたのは二匹の大型犬だった。犬は公園でじゃれあって遊び始めた。二匹とも首輪がしてある。放し飼いなのだろうと思った。  僕は怖くなって身体を硬直させる。動物好きではない僕には不愉快だった。最悪だ。  犬は僕に気づいていないのか、ただ、公園の中央でじゃれあっている。
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