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作戦はこれからだ。食後の飲み物は決まっている私と妻はコーヒー、娘はメロンソーダを注文する。そのときすきをついて妻のコーヒーに毒を娘のメロンソーダには睡眠薬を入れる。娘は急いで好きなメロンソーダを飲むだろう、そして眠りに落ちる。娘にはさすがに殺人現場を見せたくない。猫舌の妻はコーヒーが冷めてからゆっくり毒入りを飲むだろう。
問題はいつ毒を混入するかだったが案ずることはなかった。娘がトイレに行きたいと言うので妻と一緒に席を外した、このチャンスを見逃すはずはない妻には毒を娘には睡眠薬を混入した。
二人が帰ってきた、間違いないと分かっていても緊張する。私は二人が飲むのをかたずをのんで見守った。まず、娘が大好きなメロンソーダをすごい勢いで飲み始めた。
「真奈美ったら、少しは行儀よくしなさい」
「はーい」
次に妻がおもむろにコーヒーを飲み始めた。やった!............。
おかしい、二人とも何ともないピンピンしている。
「あなた、そわそわしてるけどどうしたの?」
「いや、なんでもない...」
結局食事会は何事もなく終わり、かわいい愛娘と別れた。
なんで、やることなすことダメなんだこうなったらやけだ誰でもいいから巻き込んでやる。
私は、家の出刃包丁を持ち出し街の商店街に繰り出した。
やってやる。私は奇声をあげながら包丁を振り回し人混みに突入した。周りから悲鳴が聞こえた。
ここまではよかった、しかし気づくと手に包丁がないおまけに私の恰好がいつの間にかパンツ一丁になっていた。悲鳴はこの悲鳴だった。
近くの交番からお巡りさんがくるとたちまち連行され交番で小一時間お説教をもらって解放された。私は当然の如く打ちひしがれた。
あああ、私は悪事もろくにできない意気地なしだなとあきらめた。あきらめた私は明日からアルバイトでも探すか、ホームレスにでもなるか考えた。
それを、あの世から見ていた閻魔大王とそのしもべたちはほっとした。
「はあ、やっとあきらめたか。」
「これであの男も地獄行きをあきらめそうですね。」
「本当にここ数年の地獄行きの数は異常だ。このままだと我々は過労死してしまうぞ。」
「ええ、全く。」
「この世が地獄よりも地獄らしくなるなんて世も末だな。」
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