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「さっき買い物に出た時、お店の扉に『しばらくお休みします』なんて張り紙してあったから気になってたんだよね」 アイスを齧る直前に固まった私に気がついた高良は、「琴姉、垂れてる」と言ってティッシュを二枚渡した。 一枚じゃないところが高良らしい。 「仲がいいのは良いことだけど、本気で付き合うつもりならちゃんと言ってくれないと」 何も気にしてないような笑顔で「ね」と高良に話を振られても、母さんへの裏切り行為をそう簡単に許す訳にはいかないのが娘の心情。 「本気で付き合うつもりならここから出てけ」 美人で優しくて社交的。かといってそれを鼻にかけることもなく、一歩後ろに下がる大和撫子。 それがクラブ椿のママ。 母さんが亡くなった後、常連だった父さんの世話を焼き、ついでに私と高良の面倒も見てくれた彼女。
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