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「ねぇ。晩ご飯、ラーメン食べたい。この間行ったお店行こうよ」 「謙さんは?」 「何時に帰ってくるか分からない人、気にしたって仕方ないと思わない?」 「それはそうだけど」 そう言って高良は整った顔を困らせ、ふっ。と笑う。 家庭があるにも関わらず、自分の奥さんの友人に手を出した挙句に孕ませたクズ男なんて放っておけばいいのに、高良はそうしない。 お母さんが亡くなって身寄りがない自分を引き取ってくれたからとはいえ、恩義なんてものは感じなくてもいい筈だ。 犯した過ちを償うのは、人として当然のことなんだから。 …――ザァ っと、強く吹いた風に私の髪が舞った。 風に交じり、ほのかに感じる薔薇の香り。 「風、強いね」 「うん」 何気なく言った高良の言葉が、遠い昔の記憶を呼び起こす。
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