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高良と初めて会った日。 私は高校に、高良は中学校に入学したばかり。 真新しい学ランにでっかいスポーツバッグを肩からかけ、待ち合わせの駅に現れた彼に、私はどんな言葉をかけていいか分からなかった。 線路沿い。フェンスに沿って植えられた薔薇。 携帯を耳にしながら駐車場へと歩く父さん。 駅の側にある自販機の横で待つ私と高良。 『風、強いですね』 『うん』 ふと聞こえた声は、まだ声変わりをしていなかった。 風になびいて顔に纏わりつく髪を耳にかけ、そっと隣の彼を見る。 中心がアプリコットに染まるクリーム色の花弁。 咲いた薔薇に触れようとする彼に 思わず見惚れた――
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